17年前のパソコン、自分で完全消去して"無料"で手放した話
2026年6月。自宅の和室でブログを書くことが日課となった。そして7月。夏本番。室温は30度を軽く超えた。中2階の吹き抜けに作られたこの4畳半の和室にはエアコンがついていなかったからだ。もともと誰かのための部屋ではなかったので、エアコンは設置しなかった。
エアコン、買おうか。
ちょうど8月は自分の誕生日だった。私は最近在宅中はこの部屋にいることが多かった。
なら、多少高くても、快適さを優先するべきだ。
部屋の中をぐるりと見まわす。エアコンをつける場所はある。問題ない。
エアコン用のコンセントはなく、エアコン用の穴は開いていないので、工事費はかさむかもしれないが、これからずっと快適な気温で過ごせるなら高い買い物とは思わなかった。
しかし・・・あまりにも物が散乱していた。本棚×3・ハンガーラック×2、パソコンデスク、テーブル×2、スツール×2、スリムワゴン・・・言っとくけど4畳半だよ。これ完全に物置状態。
そして・・・最近入った「新入り」が入り口横のテーブルにドーンと鎮座していた。
17年前のパソコン。ソニーのVAIOくん。新しくHPのノートパソコンを買ってからは出番がなくなって、蔵の中で静かに眠っていた。それを最近、Claudeと中身のファイルの整理をするためにこの部屋に連れ帰ってきた。そしてデータの救出だけは行ったが、中身のデータを削除して廃棄するのが面倒で、そのままにしていた。

そんな時、職場で古いパソコンの購入をした。古めの分析機器につなぐにはパソコンも古いほうがいいらしく、WindowsXPを購入した。3万円以上の値がついていた。
このパソコンも売れないかな、と思った。Claudeに聞く。残念ながら17年前のVAIOに値段はつかなかった。
よし、これを機に潔く処分しよう!
とはいえ、パソコンには個人データも多く入っていた。どこに捨てるのが安全でお得?パソコンの型番を伝え、Claudeに聞いた。
Claudeは、メーカー回収について教えてくれた。パソコンには、メーカーが引き取ってくれる仕組みがある。

本体にこの「PCリサイクルマーク」がついていれば、回収は”無料”。2003年10月以降に売られた家庭向けパソコンは、買ったときにリサイクル料金を前払い済み、ということだった。早速さがすとちゃんと私のパソコンにもそのマークがあった。17年前の私、先払いさせられていたんだ(笑)。
私のパソコンはVAIOだが、調べてみると、VAIOという会社ができたのは2014年で、それ以前のVAIOは”ソニー製”。だから回収の申込先はソニーになるようだった。

ソニーのサイトからリサイクルの申し込みをした。ネットで簡単に申し込むことができて、料金は0円なのも確認できた。
そして問題のデータだ。
17年分の写真やら何やらが入っている。いくらリサイクルされるとはいえ、いつどこでデータを見られてしまうか分からない。初期化をしても、簡単に復元できる方法があるらしいことも知っていた。私の手で、完全にデータ消去なんてできるのだろうか。
Claudeに聞くと、やはりこう言われた。「初期化だけだと、データは復元できてしまうんです。初期化は”本の目次を破る”だけ。中身のページは、そのまま残っています」
・・・だよね。で、どうすればいい?
「cipher(サイファー)というコマンドで、空き領域を上書きします。ページを、黒マジックで塗りつぶすイメージです」
そう言ってClaudeは手順を指示していく。言われた通り入力をしていく。黒い画面だ。
あ、この画面、コマンドプロンプトだ。たまにIPアドレスを調べるときとかに使うやつ。
ということはコードを打ってデータ消去するんだ。難しそうだけど、うまくいくかな。

cipher /w:C:\
コマンドを見ても残念ながら意味は分からなかった。言われるままにコマンドを打って、Enter。画面にドットがずらずら並んで、上書きが始まったようだ。時間がかかると言っていたので、そのまま放置して今夜は寝ることにする。
朝起きたら、まだ続いていた。
Claudeに話すと、もう一通り上書きは終わっていて、2回目に入っているから、終了していいと言われた。
これで終り?思ったより簡単だった。でもとにもかくにも自分でちゃんとデータを消去したんだ。・・・ちょっとした達成感!
ふと、10年以上前に、どうしても消したいファイルがあって、ソースネクストで2000円くらいの「消去ソフト」を買ったことを思い出す。今回やっていることは、きっとあれとおなじなんだろうな。今はパソコンに最初から入っている機能で、できるんだね。慌てて買わなくてよかった(笑)
数日後、パソコン回収用の、エコゆうパックの伝票が届いた。

梱包は「ビニール袋を2〜3枚重ねればいい」と書いてある。緩衝材もなし。精密機器なのに、そんな雑でいいの?——と思った。
そうか。届いた先で、分解されちゃうんだ。
だから箱もなし、緩衝材もない。古くはなったけど、大事にしていたパソコンだ。ちょっと切なかった。
そして、梱包する前に、「この出っ張っているスタンド、簡単に取れる?」と夫に聞いてみたら、ドライバーを持ち出し、いきなり分解を開始。ぐいぐいとパーツを外しにかかる。・・・が、結局スタンドは取れず、中途半端に外されてしまった部品が残された。私はそれらを集めてジッパー袋にまとめ、梱包作業を開始した。
そして、この袋での梱包が、思った以上に大変だった。袋は破れるし、つるつる滑って安定しないから、テープも巻きづらい。リビングのテーブル上で作業していたPCは、つるりと滑り、椅子を経由して、床に落ちたりして難儀した。
そういえば、Claude言ってたな。パソコンは重さの9割以上が再資源化される。鉄やアルミ、基板の中のわずかな金まで。家庭などに眠っている使わなくなった電子機器は「都市鉱山」と呼ばれていて、オリンピックのメダルも、こういう回収品から作られたそう。
だから今回の私のリサイクルはすごく大事な作業なんじゃないかな、と気を取り直す。

そしてやっと。梱包を終え、伝票を貼って、「よし、完璧」と眺める。あたりを見回す。
あ。
ACコードを、包み忘れた。
でも私は再び梱包を解くことはなかった。もう、コードは家庭で処分でいいよね(笑)
そして郵便局に回収依頼のTELをする。意外にも今日の17時に来れるようだ。
ぐるぐる巻きのパソコンを玄関に運んだ。
片付いてすっきり!と、なんだか寂しい!の両方の気持ちがあふれた。
いままでありがとう。そして、さようなら。
でもさ、もしかしたら、この先私が購入するパソコンの部品に使われるかもしれないよね。
そんなことを思いながら、私はVAIOくんのいなくなった和室へ戻った。
さて。これでもうエアコン買ってもいいよね?
そして。
お別れかと思っていたのに、その日、郵便局からのお迎えはとうとう来なかった。
我が家の玄関から、VAIOくんは動こうとしなかったのだ。
翌日も。そのまた翌日も。
ずっとここにいたいのかな? なんてね(笑)。

二日後、郵便局にTELすると、担当の課長さんが平謝りで理由を教えてくれた。「わたくしも当日はお休みをいただいておりまして、慣れない者が担当し、見落としました。日曜で職員も少なく……大変申し訳ありません💦」
そして、「本日は必ず伺います」。
その日の19時。とうとうお迎えが来た。
ちょうど私は息子とTELしていて出られず、夫が玄関で対応した。
私は、最後のお見送りはできなかった。
小さな依頼主控えの紙切れだけが、リビングのテーブルの上に、ちょこんと残されていた。